2009/05/25

『鴛鴦襖恋睦』通称「おしどり」


2009年5月 歌舞伎座 夜の部


■ 長唄・常磐津 舞踊『鴛鴦襖恋睦(おしのふすまこいのむつごと)』 通称「おしどり」


夜の部で一番楽しみにしていた演目、海老蔵&菊之助&松緑、名門若手3人によるゴージャスな踊り! そうそう、この3人、昔は「平成の三之助」って言われていたんですよね~(懐かしすぎ)。海老蔵は2004年まで新之助だったし、松緑も2002年までは辰之助で、菊之助とあわせて、「三之助」。年齢も、海老蔵と菊之助が1977年生まれで、松緑が1975年生まれ、という同世代。

海老蔵は二枚目キャラ、菊之助は美女キャラ、松緑は悪役キャラもしくは三枚目キャラ。そう、二枚目と美女と悪役or三枚目がいれば、たいていのお芝居は成立しちゃいますから、組み合わせとしてはとても素晴らしいのですよね。

そんな彼らも、もう30代。脂が乗り始める頃! といっても、歌舞伎界では30代なぞ、まだまだ「若手」もいいとこですが(いい業界!)。



で、しつこく言ってるように私は海老蔵の大ファンなのですが(笑)、でもでも。ハッキリ言って、踊りのときは、私の目は、松緑に釘付け、です!!! だって、松緑の踊りときたら、キレがあって、勢いがあって、メリハリがあって、活力に溢れていて、いつも「思わず息を飲む」ような芸を見せてくれるんだもの。スゴイですよ、あのヒトの踊り。

そう思ってたら、あの辛口批評で有名な渡辺保先生も、今月の歌舞伎座での松緑を「群を抜いている」と大絶賛(→こちら)。

実は、尾上松緑は、日本舞踊の流派のひとつ「藤間流」の家元。藤間流にはいくつか派があるのですが、そのうちの「勘右衛門(かんえもん)派」の家元で、家元としての名前は「6代目藤間勘右衛門」といいます。

さらに言うなら、今回上演されたこの『鴛鴦襖恋睦』の振付をおこなった故・2代目藤間勘祖も、藤間流のひとつ「勘十郎(かんじゅうろう)派」の家元で、家元としての名前は「6代目藤間勘十郎」だったのでした。って、既にもう名前的にややこしくなってますが…(たぶん「勘」が多すぎるんだと思う)。

ちなみに言うなら、この2代目藤間勘祖の元の奥様が、先日亡くなられた女優で舞踊家の藤間紫さん。13歳年下の市川猿之助と恋をして、40歳すぎてから一緒に暮らしはじめ、勘祖と離婚し、結局、77歳で猿之助と結婚されたのですよね。



と、そんな裏話はともかく。

すごく好きなのは、遊女・喜瀬川(菊之助)が、悪役・股野五郎景久(松緑)にむかって「イジのワルそなお顔つき」とイジワルを言い、二枚目・河野三郎祐安(海老蔵)にむかって「ほんに色白イイ男」とウットリするシーン。海老蔵と比べられちゃって、そんなヒドイこと言われちゃってムッとする松緑が、凄くカワイかった(笑)。松緑、いいなぁ。踊りもうまいし、野性味があって、愛嬌のある顔してるのに、ちょっと闇がある感じも好きだなぁ(笑)。

とか何とか言いながら!! ラスト、海老蔵は鳥の精に変身!(ここらへん、なぜ、河野三郎祐安という曽我五郎の父親にあたる人物が鳥になるのか? という謎もあるかと思いますが、「これが歌舞伎なのです」ということで今はとりあえず不問) その鳥になった海老蔵をオペラグラスで覗いてみたら、あまりに美しすぎるそのかんばせ。それだけで、「ギャー美しすぎる!」と思わず涙が出てしまった私、だったのでした。

美って、コワイ。ですね(笑)。




* 「鴛鴦襖恋睦」について詳しいサイトはこちら
* 猿之助さん、藤間紫さん死去に際して語る。こちら

(注:役者の敬称略)